神戸の若手家庭医のブログ

神戸在住の30代若手家庭医が日々の生活や学びを綴るブログです。

COVID-19の今

みなさま、お久しぶりです。

 

この4月に勤務先が変わり、神戸市兵庫区の医療法人川崎病院にやってきました。

この病院は270床の地域医療支援病院です。近隣に神戸大学附属病院や西市民病院といった大病院があって影は薄いものの、区内では一番大きな急性期病院となっています。

そしてちょうど、コロナの第4波に直面しています。

 

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あまり時事ネタについての私見を述べるのは柄じゃないのですが、ちょっとこのままではヤバいな、という危機感が今あります。何がヤバいって、自分と家族の命の危険を感じてきました。これまでの波では、30代で死ぬってことはほぼほぼなかったです。でも今回は違います。実際に30代女性が亡くなっていますし、コロナじゃなくても、その他の病気や事故によって重症になった場合、下手したら入院できないかもしれない、という状況です。

 

大阪・神戸を筆頭に、これから全国でそういう状況になっていくかもしれません。

その時の参考に少しでもなるように、現状をまとめておきます。

こんな僕もシャムズ(CIAMS:COVID-19/Coronavirus-induced altered mental status)なのかな、なんて思いながら。

コロナのせいにしてみよう。シャムズの話

コロナのせいにしてみよう。シャムズの話

  • 作者:國松 淳和
  • 発売日: 2020/06/23
  • メディア: 単行本
 

 

 

■体験談

異動したてということもあり、臨床ボリュームはかなり少なめにしていただいています。火曜日に定期外来、水曜日に初診外来、あとは病棟や会議やプロジェクトワーク、といった具合です。

そんな感じでぼちぼち慣れながら、1週間目にワクチン1回目を打ち(結構痛かった)、先日2回目を打ちました(翌日〜翌々日がしんどかった)。

 

当院では発熱者は入り口でスクリーニングし、発熱外来として別対応しています。地域の開業医からの紹介も多いです。症状が軽く自宅療養でよさそうな人はコロナPCR LAMP法(院内で1日2回検査)、入院可能性もある人やもともと予約受診などで急ぐ人はPCR Near法(随時:20-30分くらいで結果出てくる)を行っています。

ちなみに昨年度(2020/4〜2021/3)の当院の陽性件数は100人いかないくらい、陽性率は約4%でした。それがこの4月は陽性者90人近く、陽性率約19%です。1年分を1ヶ月で追い越す勢い。それが第4波です。

 

月の半ばには、ポストコロナ(発症後10日経過し症状が安定している人)で急性期病院から転院されてきた方を受け持ちました。高齢ですが独居だった方。急な病気で精神的にも弱っている様子でした。ちなみに「喉〜胸の詰まった感じ」があり、半夏厚朴湯を処方し段々元気になっています。

 

そして4月21日、22日と相次いでコロナ患者の在宅死がニュースに流れます。

 

23日には僕も発熱外来の担当となり、3人の陽性者が出ました。うち1人は救急対応をお願いし入院、1人は僕が入院担当となりましたが、その際も在宅酸素導入で自宅で見れるんじゃないかとかなり迷いました。もっと重症で入院すべき人が他にもいるんじゃないだろうか、と。幸い入院後は悪化せず、隔離期間も過ぎリハビリを行っています。

 

当初はコロナ対応病院として手挙げはしていなかったものの、実質的にはHCUに入院されている患者もおられ、月末より正式に手挙げすることとなりました。病床が空いたら保健所のコーディネートで市内全域からの患者を受け入れる形となります。

 

28日には発病後12日目の方を外来で診ました。保健所からの紹介です。低酸素や咳といった感染に伴う症状もありましたが、とにかくものすごく不安な様子でした。毎日電話で状況確認はあるものの、自覚症状が強まってもSpO2が「ある程度(後述)」あれば自宅待機継続となりますから、状況が変わらないことも不安を増強させたのでしょう。コロナ診療でもBPSアプローチが重要だと改めて感じました。

 

僕は家庭医療専門医・指導医と在宅専門医・指導医を取得しており、地域との繋がりの強化を期待されて川崎病院にやってきました。そういうこともあって、赴任してから、兵庫区で以前より訪問診療をされている先生のところに伺ったり、メーリングリストに加えていただいたりしていました。

その流れもあってか、26日に当院の内科部長と在宅の先生とで話し合いができ、何かやりたいと思っているが現状がわからず何をやっていいか戸惑っているという状況の共有ができました。そして28日には兵庫区医師会の訪問診療に携わる主な先生方と、保健所の方にも来ていただいて会議をすることとなりました。

その会議でされた現状報告は、なかなか厳しいものでした。

 

兵庫区で健康観察(だいたい発病後10日間、症状によってはそれ以上)されているのが常時130-150人くらい。報道されているように、30代〜50代でも急激に悪くなる人はいるそうです。また第4波は療養期間の後半に熱が出だすことが多く、そのため期間が長引くことが多いそうです。

SpO2モニターの貸し出しも追いつかないくらいで土日祝も働き続けられているご様子でした。疫学調査の縮小で負担はやや減ったそうですが、それでも陽性者のフォロー、受診・入院のコーディネート、時には看取り時の遺体袋の送付などもされているとのことで、負担が集中しすぎているように感じました。

そして、当初はSpO2が95%を切ったら救急要請をしていたのですが、ベッド確保が段々と困難になり、現在は80%を切ってようやく、です。

 

当院でコロナ患者が入院となり、呼吸状態が悪化して挿管管理となった/なりそうな時は保健所を通じて市民病院群に転院していただいていましたが、それも難しくなっています。

 

当院も中央市民病院も、コロナ病床を増やすために一般病床を縮小しています。コロナの患者さんを見るには看護師が多く必要なのです。また当院では、コロナ病床が溢れてしまった場合には救急車受け入れを止めざるを得ません。どこもそんな状況なので、もし病気や怪我で救急車を呼んでも、受け入れられる病院がないかもしれません。現に大阪では、救急搬送に47時間かかったというニュースもありました。

 

どうすればいいんでしょうね…

 

他にも、家族みんなが感染してしまって、でも薬がなくってどうしよう、というケースとか、高齢の濃厚接触者が陽性となっていないけど体調が悪くなった場合は保健所が救急車を呼ぶことができないのでどうしよう、というケースも共有されました。

 

もはやDMATとかPCATとか派遣依頼するレベルの災害だと思うのですが、どうも行政区ごとでなんとかしろと世間で思われているような気がするのは僕だけでしょうか。それとも全国同じような感じだから派遣どころじゃない?うーん…

 

それに、SpO2下がっている人をばらばらの在宅で対応するよりは、病院が無理でもせめてホテルなどの1箇所に集めたほうがまだ対応しやすいと思うのですが…

さすがにこれは市以上が動かないと難しいですね…

 

■これから

とはいえ、何もしなければ始まりません。

市民病院群がコロナ患者への訪問診療を始めたのが23日。在宅療養中でSpO2が低下してきている人に往診や電話診察してステロイド・在宅酸素を導入する、というものです。

先程の会議でも、地域でできることをやっていこうということで、マニュアルを作成し、かかりつけ医での対応を増やしていこう、という流れになりました。

今日も保健所からの連絡で、当院かかりつけの軽症者に電話対応して解熱剤などを処方することがありました。

他にも、zoomを繋いでこういった経験を共有していく動きもあります。

 

少しづつですが、みんなができることをやっていく。

この記事も、なにかしらの役にたちますように。