FMカンファ 2020/7/7
みなさま、こんにちは。
僕らの病院では、毎週火曜日に専攻医・指導医集まってFMカンファをやっています。
(FM=Family Medicine)
これは特に形式があるわけではなく、専攻医にモヤモヤ・困った症例をいくつか出してもらって、コメントを出し合って深めていく、というカンファレンスです。
今回出た症例はこちら。
①80代男性
以前にも相談のあった症例。
その時は他院で認知症と言われたことに腹を立て+運転免許更新のタイミングで
診断書希望で来た、というシチュエーション。
まずは継続性を保とう、ということになっていました。
で今回は、3週間前に免許取り消しとなりそこから元気がなくなって
引きこもっているということを妻から聞いた、という話でした。
高齢者の食思不振、という話は軽く流し(以前、本にまとめたのを見てもらう)
専攻医が何に困っているのか、を掘り下げました。
そうして見えてきたのは、食思不振の精査や治療を
”受けてくれないのではないかという不安"でした。
そこで以下のことを議論しました。
・患者の価値観(健康観)をどう探るか
・どんな言い方で聞くか
・本人と家族の認識にズレはないか
もしかしたら長生きは望んでいないかもしれないし、逆になんでも調べたいかも
しれません。その思いを汲んで、精査を組み立てていきましょう。
(ただし、うつ病は除外した上で)
②50代女性 アルコール依存症
てんかんの既往もあり、飲酒により発作を起こしたこともある
コロナの影響で今は無職
家族からも酒をやめるように言われているがやめられていない
どうアプローチするか?
これまた専攻医が困っているところを探ります。
どうやら"無関心期"(僕は"前熟考期"と呼びたい派です)と考えており、
種まきくらいしかできないのかなと思っている様子でした。
そこでちょっと掘り下げてみます。
「朝から飲んだりするのか?」→夕食のときだけ
「失業との関係は?」→なさそう
「住んでるところは?」→駅の近く(運転免許なくても困らない)
この時点で、本人は飲酒の害を実感していないのでは、と仮説がたちます。
ですので、必要なのは重要度を高めるアプローチで、動機づけ面接がヒントに
なるかもね、とアドバイスをしました。
また、家族も半ば見放している状況、と言っていたので、
アルコール依存症という問題を"外在化"することで家族を治療に巻き込む
ことができるかもしれない、ともアドバイスしました。
そうはいってもアルコール依存症の治療は大変です。
やめられない中でどう健康を維持していくのか、というプランも
並行して考えていくほうがよいでしょう。
③家族で診ることになった症例
もともと僕がみていた家族です。98歳の女性とその息子たち。
ひょんなことで専攻医がみることになったのですが、徐々に老衰に向かっている
中で様々な要求を息子たちから受けて困っている、とのことでした。
しかし、ディスカッションを通して見えてきたのは、息子たちの要求が
おかしいのではなく、それを伝える道筋がよくないのでは、ということでした。
彼らは希望をケアマネに伝えたり、地域連携室に伝えたり、医師に伝えたり
していて、医師の思惑と違う形でケアマネが動いていたりしていたのです。
それを解決するには、情報の道筋を整える・情報のハブを設定するのが有効です。
そして、医療介護側が綿密にコミュニケーションをとり、一枚岩になることです。
こうした、経営学的な視点(チーム形成、組織論)も患者ケアには必要です。